蒲谷鶴彦: 自然と野鳥

 ソースは野鳥録音の第一人者、蒲谷鶴彦氏の「自然と野鳥」で、16bit44.1khzをアップサンプリングして24bit176.4khzにしたもの。Wavpack後の総サイズは1.22GB。

 アップサンプリングするとまず感じるのがリアルさである。ずっと都会にいると、旅行などで行くと感じてしまう怖さにも似た自然のリアルさに似ている。効果音、エフェクトではないそこにいる生き物の声である。
 次に感じるのがアルバムとしての完成度である。かみなりの音ではじまり、しとしとはじまる雨の足音、そして高らかに鳴くノジコなんかはまるでピアノ協奏曲のよう。というか人間が真似したのか。
 1曲1曲のタイトルは「ソリハンシンギ、オオヨシキリ」と鳥の名前がついているが、アップサンプリングすると背景の音もくっきりきわだつ。波が寄せる音、虫のぶーんという羽音などの自然音だけではなく、農作業しているのだろうかトラクターの音。ぱたぱたぱたと出港する漁船の音、遠くのぼーという汽笛、からんからんと下駄の音など、いくつ見つけられるだろうか。単なる雑音から具体的な音になる、動きのある音になるのもアップサンプリングの魅力である。
 タイトル中の「自然」に人間の営みも含まれているのだろう。鳥の音と人間の生活音は決して独立してはいないことがわかる。そうなるとタイトルも曲名ももっと付けようがあるのにとおもう。このCDは決して効果音的なものではなく、サウンドスケープ、その土地の様子がまるごと、野鳥の声を中心に記録されているんだなとおもう。こういうものは映像で記録、表現できないもので、建物や景観の保存と同様、残して生きたい日本の音風景であるとおもう。