アップサンプリング比較ガイド 第三版

 試したアップサンプリングツールがさらに増えたので。整理をかねて第三版。

1.はじめてのアップサンプリング

 WaveUpConverterがおすすめ。”はじめての”と書いているが、精度、インターフェイス、設定の柔軟性の全てにおいて優れており、基本的にこれで十分で他はいらないほどである。FUSEの1つ前のバージョンをベースにしているが、だからといって遜色はない。
 最初はオプションは、フィルタップ数は2^[23]+1 tap、ディザ拡散処理のチェックは外して、アップサンプリング倍率x4(要サウンドカードが176.4kHz/192kHz対応を確認)ではじめることをおすすめする。
 また細かいことだが、できあがったファイルは、アップサンプリング処理のファイル作成の性質上、断片化しやすい。最終的に配置するドライブの空き容量は十分に確保して、可能ならば処理は別のドライブで行い、しかるべきエンコード後、それを所定の位置へカット&ペーストして、断片化を防ぎたい。どうしても断片化が防げない場合には、foobar2000などを使って読み込みキャッシュを十分に確保したい。

2.もっと速く!(使い勝手はすこし悪くなります)

 SSRCがおすすめ。SSRC自体はコマンドラインアプリケーションで、インターフェイスがないので、ラッパーのSSRC-GUIを使おう。WaveUpConverterに比べて、別々に2つダウンロードしなくてはいけないし、事前の準備がめんどくさい。
 しかしこの使い勝手を無視すれば、いったん環境ができてしまえば、SSRCはフィルタ精度(タップ数)は落ちるが、品質とスピードのバランスは現時点で最高ではないかとおもう。またフィルタの細かい制御もできる。世界でも評判が高く、日本を代表するフリーソフトウェアではないかとおもう。
 設定はSSRC本体はいろいろな版がWEBでみつかるが、多くのバグが修整された1.30を使おう。またコアは通常のssrc.exeではなく、高精度版(High Precision)のssrc_hp.exeを使う。その他の設定は、PDF of Noise(ノイズ確率密度関数)は1の三角分布で。時間は多少増えるがクリッピング防止に導入されたTwopass processing(2パス)は必須。より繊細な音を楽しめるNormalize(ノーマライズ)はオン。そしてDither(ディザ)はここでもnoを指定する。

3.諸刃の剣か?ディザへの挑戦の前にお読みください

 これまでディザなしでやってきた。なめらかなで澄んだ音になることは十分にわかるとおもう。ただ周波数分析でみるとわかるように、帯域でみるとオリジナル以上のもの、CDの場合にはスペックの44.1kHzの半分22.05kHz以上の情報は含まれない。自然界の音、ライブの音にはおどろくべきほど100khz以上までしかも驚くべきダイナミックな情報が含まれており、この点はまるで別物を聴いていることになる。
 これに対して各アップサンプリングツールで、さまざまな手法でディザによって付加する機能が提供されている。これによって聴感上はどうなるか。個人的には、言葉で適当なものを探すと”艶やか”なるとおもっている。これまでCD換算で数百枚のソースをアップサンプリングして聴いて楽しんできたが、「ほーうつくしい」とおもわされたことは幾度もある。
 しかし、このディザをかけた結果、曲によっては、曲の一部でギスギスした感じがでる。これを起こさない神ツールにはまだ出合っていない。ツールによっては、ある曲ではでるが、ある曲では出ない。またその逆など。不協和音に似ているが、歪のような感じでそれなりに辛い感覚がする。
 よってまず基本はディザなしで、その後お試しでディザをかけるのがよいとおもう。ただ例外として古い音源や品質の悪いCDなどのソースはディザをかけると見違えて豊かになるので、お試しあれ。

4.いざディザへ...

 さてディザといっても各ツールでさまざまな手法がとられているので比較は難しいが、周波数解析にみるdb値をベースに実際の感覚で比較するならば、ディザの強さはあるサンプルでの48kHz付近での強さは、FUSEを1とすると次のような結果となる。

 9 WaveUpConverter(ディザあり)
 6 UpConv(ディザではなく高域補間)
 2 r8brain(デフォルト)
 2 SSRC(ディザtriangular)
 1 FUSE(デフォルト)

 必ず大きいほど歪が強くなるわけではないが、その傾向は強いようにおもう。ただその分おもしろさが増すことも見逃せない。WaveUpConverterは強い分そのおもしろさがすぐにわかるとおもう。SSRCはディザの手法は3種類(192khzの場合は2種類)から選べる点がおもしろい(比較はまた後日)。最後のFUSEなどはきわめてうすくかけている。これで歪を感じることが無くなるわけではないが、大抵のソースに対してこのわずかな塩気は、絶妙なバランスで効くとおもう。(なおVC64 Professional RC2は高域にディザがみられないのでここではとりあげていない)