Valery Afanassiev:2007年12月4日 京都 実相院

 ソースはNHKで「漂泊のピアニスト アファナシエフ 京都へのささげもの」と題して放送されたもので、NHK衛星アナログ放送Bモードを16bit48khzリニアPCMで記録したもの。これを24bit192khzにアップサンプリング。WavPack後のサイズは計1.35GB。

 アファナシエフの演奏は個人的にはとても好きで、また音楽対談集なども読んでいるが、NHKが素晴らしい番組をやってくれました。番組自体は彼が晩秋の京都を旅する様も描いており、いつもの演奏だけの番組とは異なる形で、みても楽しい。
 さてアップサンプリングするとこの小さな部屋での演奏がよりリアルにせまってくる。シルヴェストロフ作曲オーラル・ミュージック 第1番では、温度や湿度の変化によるものだろうか、ときどきミシッ、ピキッと建物の木がきしむ音が聞こえる。また楽譜をめくる紙の乾いた音、演奏に伴う着物の布ずれの音もはっきりきこえる。
 なかでもいちばんの醍醐味は和音が鳴らされる中で、おそらく弦の共鳴によるものだとおもうが、不協和音となってズーウオンと光る瞬間で、ピアノ好きにはたまらない。アファナシエフは「わたしはお気に入りのピアノを運んで世界をまわるようなことはしない。そのところ、それぞれのピアノの音をさぐりだす」と語っていたとおもうが、まさにその作業の結果だろう。
 アファナシエフはこういったまわりの音に耳を傾けながら、まさにまわりの空間自体と対話しながら演奏する。それらすべてを音楽に昇華させていくようで、彼がある対談で述べていた「よい演奏とはその世界を創ること」、「世界のもののあはれ」が伝わってくる音になっている。