Sony HR-MP5 マルチエフェクトプロセッサー


 現在行っているアップサンプリングの原型ともいえるのがこのHR-MP5だ。もともとはこれはKORGのシンセサーザーWavestation EXに接続していたのだが、Wavestationの内蔵エフェクトととは比べ物にならない暖かくもありすがすがしくもあるエフェクトがたいへん気に入っていた。当時DATに録音した音源が残っているが、今きいてもいい音がする。
 なんでこういい音がするのか。こうも音が良くなるのかとパンフレットをみると、18bitのA/Dコンバータでデジタル化して、それを高クロックで動作する2つのプロセッサで処理後、18bitのD/Aコンバータで出力しているとある。そのときピンときた。それならこれをCDプレイヤーにつないでみたらどうだろうと。
 やってみたとこころ素晴らしい。エフェクトをオンにしつつもかぎりなく0に近いミックスで鳴らすと、厚みがある音となって、こういう楽しみ方もあるのかとおもった。イコライザーをかけるわけでもなく、はっきりとエフェクトをかけるわけでもないが、もっと聴きたいとおもう音になったのである。ディザをかけるのに近いだろうか。
 さて、しばらくしてDENONのアルファプロセッシングが来たので、この構成で聴くことはなくなっていたが、この機器自体はソニータイマーが発動して停止した。正確には内蔵のボタン電池がきれたのだが、そうすると機能も全く停止する。しかもこのボタン電池は半田付けがされており、簡単には交換できないふざけた構造となっている。
 ソニータイマーとはいえば、これまで経験した故障をあげると、CDウォークマンの可動部のばねや、DATウォークマンの電池ケースのふた、テレビの前面にある手動で開閉するふた、ノートパソコンや携帯のバッテリリコール問題、テレビのコンデンサー交換など、どれも数年間の使用や耐久性を前提としたテスト条件、構造になっていないことに起因して壊れることに特徴がある。ソニー衰退の原因はここにあるのではと個人的にはおもっているが、こういう品質のノウハウはそうかんたんにはつくりあげることができないだろう。