Märchen Veil MemorialCollection

 小学生のかなり早い段階でYMOに染まってしまい(これには知り合いの知り合いに教授と高橋幸弘がいたという近いようで遠い、ただ子どもにとってはそれだけで十分すぎるきっかけ)、流行の曲には興味を持てなくなってしまった。とはいえCMでもなんでも、どこかにいい音楽はないかと積極的に周りに耳を傾けていたわけで、このシステムサコムから出たゲーム「メルヘンヴェール」も、音楽の嗜好に影響したという意味で想い出深い。
 これは小学生かもう中学生になっていたかもしれないが、家に突然現れたPC-9801のゲームを探しに秋葉原の駅前のビルにあったNECのお店(BIT INNだったか?)でみつけたゲームであった。ゲームといってもパッケージが1センチもない薄いもので、他のソフトとソフトの間にうずもれていた、当時98向けのゲームが極端に少なかったからこそ発見できたものだった。
 まずパッケージが美しい。そしてゲームの画面も音楽もどれも美しく、この意味では98ユーザである大人向けでもある。幸いパッケージが場所もとらないこともあって、まだ本棚に残っていたのでこの機会にスキャンしてみたものを掲載している。多少汚れがあるが、それでもしっかりとした作りなのだろう。当時とほぼ同じ状態である。
 そして今年の1月ごろ、当時の音源でCDが発売されるというニュースを目にした。何故?今頃?とおもいつつも、なんもためらいものなく注文した。当時聞いた音楽はほとんど今でも思い出すことができるすぐれたものであったし、あと当時の音源AMD-98の音をもう一度聞いてみたかったこともある。NECのFM音源ボートよりやっぱりAMD-98の音である。やわらかく、暖かい音であった。
 音楽はバロック音楽またはその雰囲気を漂うものが多かった。バロック音楽はそのままBGMとして使っていたが、その普遍性のためか違和感はなかった。またオリジナル曲も素晴らしく、”天国”や”YHのテーマ”などはっとするものも多い。そしてメールヘンヴェールの2作目のエンディングに、これを機会にバッハに興味を持ったともいえる記念すべき曲、カンタータ BWV140から コラール 「シオンは物見らの歌うのを聞き」があった。ゲームは今でも苦手だが、終わりにどんな音楽がするのだろうとがんばった達成感を満たしてくれる曲であった。当時の古楽器、現在の楽器、現代風アレンジ、AMD-98のような制限のある電子音でも、いい音楽はいい音楽のままである。


 音源はCDの帯域いっぱいまで録音されているので、アップサンプリングはそのままでも、Upconvの高域補完でもハイカットすることなくOKである。正直オリジナルのデータ量の少なさからアップサンプリングの効果は少ないが、想い出の曲という理由だけでするのもいい。